桃色
「うーん、悩むなあ。」
休みの日にカカシさんと一緒に買い物に来たんだけど、カカシさんが珍しく買う物について悩んでいた。
いつもは、ぱぱっと決めて、ささっと買うのに本当、珍しい。
「どっちがいいかなあ。」
カカシさんが、どっちを買おうかと悩んでいたのはエプロンだった。
買い物に来てエプロン売り場の前を通りかかって、そこから動かない。
なんだかエプロンが欲しくて、しょうがないらしい。
そういや、最近、カカシさん料理に凝っているからなあ。
「どっちがいいと思います?」
カカシさんが俺に聞いてきた。
「どっちって言われても・・・。」
聞かれた俺は答えに詰まった。
カカシさんが持っているのは『薄い青色のシンプルな感じ』のエプロンと『淡い桃色で可愛い感じ』のエプロンだった。
うーん。
カカシさんには優しい感じの桃色が似合うかなあ。
そう思って「こっちかな?」と桃色のエプロンを指差した。
カカシさんは「ですよねえ。」と大きく頷いた。
「俺もこっちかなあ、って思っていたんですよね。」
俺たち心が通じてあっていますね、なんて恥ずかしい台詞を、さらりと言うとカカシさんはエプロンを買いにレジに行ってしまった。
こんな人目のある場所で、あんなことを自然に言うなんてすごい人だ、と俺が感心しているとカカシさんが戻ってきた。
「さ、帰りましょうか。」
にこやかに言われて手を取られた。
ごく自然な感じで手を繋ぐ俺たち。
こんなことも、さらりとできちゃうなんて、すごい人だ。
俺は再び、感心というよりも感動してしまった。
家に帰り着くとカカシさんが「はい、どうぞ。」と俺に包みを差し出してきた。
「え、これ・・・。」
さっき買ったエプロンが入った包みだよな・・・。
「イルカ先生、エプロンしてください。」
にっこりと笑って、そう言われる。
俺!
俺には桃色なんて似合わないよ、絶対に。
確信しているのでカカシさんにそう言うと、ふっと笑ったカカシさんは自分で包みを開けてエプロンを取り出した。
「じゃーん!」
桃色のエプロンは二つ、入っていた。
「ペアのエプロンでーす。」
ペア・・・。
カカシさんは嬉しそうに、いそいそと自分にエプロンを装着する。
桃色のエプロンは、やはりカカシさんに似合っていた。
すごく可愛いらしい。
エプロンを付けたカカシさんは、もう一つのエプロンを手に持ち俺に、にじり寄って来た。
「さあさあさあ。イルカ先生も、つーけーてー。」
エプロンを持って迫られる。
「い、いや・・・。俺、似合いませんよ、その色は・・・。」
俺は逃げるように、じりじりと後退するが背中が壁に当たって行き詰った。
「イルカ先生。」
語尾にハートマークが付いてそうなカカシ先生の嬉しそうな顔。
「二人でペアのエプロンして、一緒に料理したりしましょうよ。」
きっと、すごく楽しいですよーと誘惑してくる。
カカシさんと一緒に料理したりするのは、きっとすごく楽しいだろうなあ、と俺は、つい想像してしまった。
いいよなあ、いいなあって。
それが顔に出たらしい。
「ね?イルカ先生、エプロンしようよ。」
可愛いエプロンをして、可愛くなったカカシさんに、可愛く言われて・・・・・・つまり俺は、結局、まあ、カカシさんの望み通りになってしまった。
カカシさんが俺に、とても楽しそうな顔をしてエプロンを付けてくれる。
「イルカ先生、すっごく似合いますよ。可愛い〜。」
なんて言われたけれど。
俺より可愛いエプロン似合って可愛くなってるのに、何、言ってんだか・・・。
なのだけれども、カカシさんの嬉しそうな顔を見ていると俺も嬉しくなってきて、ペアのエプロンもいいかなって思い始めてきた。
だってカカシさんが幸せそうだから。
カカシさんが幸せだと俺も幸せだから。
「じゃ、エプロン記念日ってことで。」
カカシさんが俺を腕に抱きこみ、そっと唇を合わせてくる。
カカシさんから優しいキスを貰って、俺も優しいキスを返して、沁み沁み思った。
大好きな人と一緒だと本当に幸せだなあって。
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