どうぞどうぞ
時々、イルカ先生が、どーんと俺にぶつかってくる。
力加減も何もなく、それは、もう勢いよく。
ぶつかってくると言うよりは飛び込んでくるという方が正しいかな。
そういう時は、あれだ。
酔っ払っているか究極に疲れているかの、どちらかだ。
今日は、究極に疲れている方だった。
「ただいまー。」
疲れた声が聞こえたと思ったら、家に帰ってきたイルカ先生は真っ先に俺の所に来た。
「お帰りなさーい。」と俺が言い終わる前にイルカ先生は俺の胸へと、どーんと体当たりみたいな、ぶつかり方をしてくる。
「・・・・・・カカシさん。」
いつものイルカ先生らしくない、弱弱しい声が聞こえてきた。
「はいはい。」
ここにいますよーと抱きしめて、背中を優しく撫で擦る。
腕の中のイルカ先生を間近で見ると少し、やつれた様子で、だいぶ、お疲れのようだった。
イルカ先生は、ここんとこ、アカデミーも受付けも忙しくて、その合間をぬって任務に行って火影様の手伝いもしていたからねえ。
俺も任務が重なって、手伝ってあげたくても手伝えなかったし、といってもイルカ先生は俺に手伝ってほしいなんて一言も言ったりしないけどね。
この前、俺が任務から疲れて帰ってきたとき、明るい顔で出迎えてくれて何くれとなくしてくれたから、今度は俺がそれを返したい。
それに滅多になくイルカ先生から甘えてくれているわけだし、存分に甘えてもらおう!
張り切った俺の心とは裏腹にイルカ先生は、ひょいと俺の胸から離れた。
「・・・どうも。もう元気になりました。」
一言、ぼそっと呟くと、我に返って恥ずかしくなったのか、そそくさと洗面所に逃げ込んでしまう。
そんなイルカ先生に俺は言った。
「俺の胸なら、いつでも空いてますからね!」
ちら、とイルカ先生が振り返る。
俺は満面の笑みを浮かべ、両手を広げた。
「どうぞどうぞ。この胸はイルカ先生のためだけにあるんですから!」
洗面所の扉が、ぱたんと音を立てて閉められた。
閉められてしまったけど、俺は見た!
扉が閉まる直前のイルカ先生の顔は赤く染まっていた。
可愛い人だなあ、と思って俺は、にんまりとしたのだった。
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