ダイエット
「あれ?」
風呂上り、体重計に乗ったイルカは体重計の針の位置の変化に気がついた。
心なしか体重計の針が、いつもの数字より大きいところを差している。
「二百グラム多い?」
体重計に乗って、体重が多いということは、つまり。
「俺、太ったってこと?」
ラーメンの食べ過ぎやカロリー摂取には一応、忍者なので気を遣っていたのに。
自分のベスト体重から減ったり増えたりは好ましくない。
少し体重が増えただけなら傷は浅い。
「痩せられそうなうちに痩せないと。」
イルカは密かに決意した。
「イルカ先生、もう食べないの?」
食事時、カカシに聞かれてイルカは「ええ、まあ。」と言葉を濁し笑って誤魔化そうとした。
痩せようと決意したことはカカシには言っていない。
カカシさんに言うとあれだよ、変に心配して、カロリー半分の手作り弁当、カカシさんの愛情100パーセント入りを持たされるからな。
以前に持たされたカカシの手作り弁当は彩色も見事で美味しかったが問題があった。
どこからどう見てもカカシがイルカのためだけに作った、ということが一目で分かる見事な出来栄えだったのである。
あれはないよな、というか二人だけの時にしてほしい。
そしたら堂々と食べれるのに。
隠しながら食べるのは忍びなかったなあ。
イルカが回想していると再びカカシが聞いてきた。
「イルカ先生、本当に食べないの?美味しくないかな?」
食事を作ってくれたのはカカシで料理の味は申し分ない。
カカシの悲しそうな顔を見てイルカの決意は早くも崩れ去った。
明日からやればいいよ、な。
「ごめんなさい、カカシさん。すごく美味しいです、全部食べますから。」
イルカが箸を持ち食べ始めるとカカシは安心したように、にっこりした。
「また増えてるよ。」
痩せようと決意してから数日後、体重を量るとイルカの思ったとおりの数字にはなっていなかった。
減っていなかったのである。
「うーん。」
イルカは考え込んでしまう。
あれから鍛錬等の運動量を増やしたのに。
朝昼の食事もカロリーを計算して必要最小限に量を減らしたつもりだけど。
「夜の食事かな。」
カカシさんの作ってくれる夕飯。
量が少々多いけど、すごく美味しいから、ついつい食べてしまう。
カカシの目もあるので残せない。
「いやいや、カカシさんのせいにするのは駄目だよ。」
自分で何とかしなきゃ。
体重が増えると困るのは自分自身だしね。
それに何よりカカシさんは自分と同じもの食べてるのに体重増えてる様子がないじゃないか。
明日からもっと運動しよう、そうしよう。
イルカは決意を新たにしたのだった。
「ねえねえねえ、イルカ先生。」
カカシが嬉しそうにイルカに寄って来た。
背中にペタリと貼り付いて、両腕をイルカのお腹に回してくる。
「もしかして体重増えました?」
カカシの腕の中でギクリと体を強張らせるイルカ。
一番知られたくない人に知られてしまったか。
「もうそろそろ、体重が増えてもいい頃だと思うんですよね。」
「え?」
カカシの物言いに疑問を感じてイルカが振り向くと、満面の笑みのカカシの顔があった。
「カロリーの高い材料を選んで、夜ご飯を作っていたからね。」
そういえば最近はカカシが夜に食事を作ってくれていた。
悪いなと思いつつも、イルカはありがたく作ってもらっていたのだ。
「じゃあ、カカシさんは俺を太らせるつもりで食事を作っていたんですか?」
「うん。」
イルカの問いにカカシは笑顔で頷く。
「何で、そんなことしたんですか?」
脱力するイルカ。
体重のことで、あんなに悩んだのに原因は目の前の人にあったなんて。
「えー、だってさー。」
カカシが、でれでれとした顔になる。
「幸せだと太らなきゃいけないんだって本で読んだんだもん。」
本とはカカシの、あの愛読書のことだろう。
「イルカ先生って太らないなあって思ってさ。」
だから頑張って食事を作っていたんです、と言うカカシ。
「で、体重増えましたか?」
カカシが嬉しそうに聞いてくる。
イルカは原因が分かり何とも言えない表情になった。
体重が増えたのは良いことなのか悪いことなのか。
「ええ、カカシさんの言うとおり、その。つまり増えましたよ、体重が。」
イルカは渋々と体重増加を認め、その上で訂正を入れることにした。
「でもね、カカシさん。」
「なに、イルカ先生?」
「太らなくても幸せになれるんですよ。俺は太らなくてもカカシさんといれば幸せなんです。」
「えっ?」
イルカの発言に驚くカカシ。
本当に驚いているようだ。
「そうなの?だって本には・・・。」
愛読書を持ち出そうとするカカシの口をイルカは手で塞ぐ。
「あれはあれです。カカシさんと俺には・・・ふ、二人だけの愛の形があってもいいでしょ。」
赤面する顔でイルカは力説した。
ここで頑張っておかないと、益々体重は増えるばかりだ。
それはものすごく避けたい。
「だ、だから、普通のご飯にしましょう、ね」
イルカのことをしばらく見つめていたカカシは「そうだね。」と言ってイルカを安心させた。
良かった、これで元の体重に戻せるよ。
ほっとするイルカ。
カカシの方はイルカの言葉を聞いて。
二人だけの愛の形か〜、良い言葉だな〜、イルカ先生が幸せなら俺も幸せだしねぇ。
そんなことを考えて、どっぷりと幸せに浸っていたのだった。
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