あつさ
「暑い・・・」
カカシは呟いた。
「暑い〜」
更に呟いた。
「暑いー」
もっと呟いてみた。
「あっつい」
無論、隣の人に主張するためだ。
カカシの隣には恋人であるイルカがいる。
ここはイルカの家でカカシもイルカも暑さでへばっていた。
ちなみにイルカの家にはクーラーがない。
扇風機も壊れてしまっていた。
「もう〜」
カカシの隣で冷たい麦茶を飲んでいたイルカは眉を潜めてカカシを見た。
「暑いと幾ら言ったところで涼しくはならないんですよ」
「なら、どっかに出かけませんか?」
「炎天下の中、外に出るのは御免蒙ります」
「涼しくなることしましょうよ」
ねえ、とカカシがイルカに強請る。
「涼しくなることって・・・。アイスでも食べますか?」
「そうじゃなくて〜」
寝転がっていたカカシは、ごろごろと転がって座っていたイルカの腰に、ぎゅっと抱きついた。
「抱き合って昼寝するとか〜、くっ付いてテレビ見るとか〜」
「あのねえ、カカシさん・・・」
「あとはイルカ先生が俺に抱きついてくるとか〜、俺がイルカ先生を抱きしめるとか、それから〜」
「そんなことしたら暑さ倍増じゃないですか!」
カカシの言うことは暑そうなことばかりだ。
汗を掻いているのに、くっ付いたり抱き合うなんて以ての外だ。
「そんなの嫌です。暑いのに抱き合うなんて」
ぷいとイルカが、そっぽを向く。
「じゃー、いーでーす」
イルカの腰に抱きついたままのカカシが言った。
「それは我慢しますから俺のこと好きって言って」
「え、好き・・・」
どきっとしたように自分の腰に抱きついているカカシをイルカは見下ろす。
「そう、それだけならいいでしょ。言うだけなら暑くならないし」
下からイルカを見てくるカカシは上目遣いで。
なんだか逆らえないような雰囲気だ。
「えー、えっとー」
カカシに見つめられるイルカは体温が上がってきた。
ぽっぽっと体が熱くなってくる。
カカシのことは好きだ。
大好きだ。
でも面と向かって言うのは恥かしい。
こんな状況で言うのは面と向かっていうのより破壊力がある。
「あれ?イルカ先生、体が熱くなってきていませんか?」
抱きついているカカシに指摘され、ますます体温が上昇する。
「大丈夫、イルカ先生」
心配そうにカカシはしてくるが・・・。
カカシさんが俺から離れれば問題解決なのに!
イルカは心の中で、そう叫ぶ。
カカシが腰にくっ付いていることが一番の問題だ。
下からカカシに見つめられると反射的に、かーっと体温が上昇してしまう。
この状態でカカシさんに好きなんて言ったら・・・。
きっと自分は湯沸かし器のごとく血液が沸騰してしまうような気がする。
恥かしさが原因で。
やっぱり、ここは・・・とイルカは妥協案を出した。
「やっぱり俺がカカシさんに抱きつくという方向でいきましょう」
「ほんと!」
カカシは途端に起き上がり両手を広げてウェルカムな体制になった。
イルカを待ち構えて顔を、にこにこさせている。
思い切ってイルカは、その中に飛び込んだのだが。
カカシに、ぎゅっと抱きしめられて。
好きだと囁かれて。
結局、体の熱さは収まらなかったという。
そんな夏の暑い日の、ある日の出来事であった。
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