アルバイト
受付け所は、いつも平和、というわけではない。
時に穏やかな微風のような、時に冷たい風が吹きすさぶ嵐のような様様な顔を見せる。
そして、今日は嵐のようだった。
ピリピリと肌を刺すような雰囲気が受付け所に充満している。
激務から帰還した忍びが、受付けをしている中忍に難癖付け始めたのだ。
上忍であるから、受付けの中忍は誰も逆らえない。
また、そういう時に限って、止めてくれるような上忍も受付け所には来ておらず。
五代目火影の綱手も席を外していた。
一触即発。
受付け所内は緊迫していた。
「あぁ?気に喰わないって言ってんだよ。」
上忍は語気荒く、中忍に食って掛かっている。
因みに、理由はものすごく、くだらなくて。
処理済と押した判子のインクが薄いとか提出書類の受け取り方が悪いとか、そんな理由である。
もちろん、受付けをした中忍は規定に従い、きちんと業務をこなしていたし挨拶もしていたのだが。
どうしようもない理由で、いちゃもんを付けられて困っていた。
「言いがかりではないでしょうか?辛い任務の後に、辛い気持ちになるのは分かりますが・・・。受付けの私たちに、あたるのは違うのではないですか。」
そんなことを毅然と言って、強い瞳をしているのは中忍の海野イルカである。
上忍はグッと一瞬黙り込み、次に拳を握った。
「お前に何が分かるんだ?」
イルカを睨む目は、怒りが大半ではあるものの、悲しみの様相も見せていた。
だけれども握った手は上に翳され、イルカは覚悟して目を閉じた。
しかし、いつまで経っても予想していた衝撃はこない。
そっと、目を開けてみると、そこには驚くべき光景があった。
「何してるんだい?任務が辛かったからって、受付けの中忍にあたるなんて筋違いもいいところじゃないかい。」
五代目火影の綱手が、先ほどの上忍の襟首を片手で軽々と掴み体を持ち上げている。
上忍の両足が宙に浮いていた。
「みっともないだろ。」
綱手に言われて上忍の顔からは血の気が引いている。
「少し頭を冷やしてきな。」
綱手は受付け所の窓をガラリと開けて。
「冷静になったら、又おいで。」
そう言って力一杯、空に投げた。
上忍は、きらりと光って空の彼方に消えていった。
「ご、五代目。いいのですか?」
一部始終を見ていたイルカが青ざめて聞く。
「あの上忍の方、大丈夫なのでしょうか?」
「何だ、心配性だな。イルカは。」
綱手は豪快に笑うと、安心させるように言った。
「投げた方向には池があるから、そこに着水しただろうよ。なあに上忍なんだから、ちょっとやそっとじゃ死にゃしないって。」
「はあ。」
「それより仕事仕事。」
そう言われ慌ててイルカを始め、受付けの中忍達が業務を再開した。
綱手も受付けに座って仕事を再開する。
綱手は隣に座るイルカをチラリと見て、心の中で呟いた。
実はさ、カカシから頼まれているんだよね。
イルカが危ない目に合いそうになったら、助けてくれって。
一回、助けるごとに十万両なんて、破格のバイト料じゃないか。
美味しいアルバイトだよねぇ。
綱手は十万両の使い道を考えて、ニンマリと笑ったのだった。
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