あれこれ
夕暮れ時の帰り道。
俺の隣にはイルカ先生がいる。
二人で何気ない話をしながら家まで帰るのだ。
後は、夕飯の買い物をしにスーパーに立ち寄ったりね。
という訳で俺は聞いた。
「イルカ先生、今日の夕飯どうします?」
外で食べるなら美味しいとこを調べてきたので、ばっちりだ。
「あ、実は。」
イルカ先生はニコニコしながら通勤カバンから、ある物を取り出した。
「今日、三代目から頂いたんです。」
じゃーん、とか言いながら俺に見せてくれたのは小さな菓子折りみたいなもの。
箱の表には、紅葉子、と書いてある。
「くれない、ようこ?」
思わず口に出てしまった。
「何それ、女の名前なんか書いてあるじゃないの?」
不機嫌さが口調に出る。
「え?」
イルカ先生は不思議そうな顔で俺を見た。
「これ、くれないようこ、って読むんじゃなくて『たらこ』って読むんですよ。」
「え?そうなの?」
今度は、イルカ先生は面白そうな顔をして俺を見る。
「カカシ先生も知らないことってあったんですねぇ。」
「そりゃあ、有りますよ。」
気恥ずかしさを不貞腐れることで隠す。
特に俺にとって、イルカ先生は未知の領域だよ。
「で、夕飯は、それが食べたいの?」
俺、紅葉子は少し毒々しい色合いなので苦手だったりするんだけど。
「はい。これ、すごーく美味しいお店のなんですよ。」
「へえ。」
「今日はご飯の上に一本丸々のっけて食べて、明日の朝はお茶漬けで、明日のお昼はお握りに入れて。」
「ちょっと待って。イルカ先生、おかずはそれだけしか食べないつもり?」
そうです、と普通に答えるイルカ先生の手を引っ張って、俺はスーパーに直行した。
もちろん野菜を買うためにだ。
野菜はしっかり食べなきゃね。
数日後、紅葉子を食べ終わった頃。
これで、ようやく紅葉子呪縛から脱出だと思って、今日は普通の夕飯が食べれるぞ〜と喜んでいたのに、イルカ先生が嬉しそうにある物をカバンから取り出した。
「今日、三代目から頂きました。」
今度は何?
きれいな桐の箱に入れられた、それは・・・。
「烏骨鶏の卵です。」
とても濃厚な味なんですって、と説明してくれるが。
「今日の夕飯は、これの卵かけご飯に、明日の朝も卵かけご飯食べて、明日の昼は玉子焼きを具にお握りで。」
「ちょっと待て。イルカ先生、それだけをおかずにご飯を食べるつもり?」
ざっと見て、卵は二十個ほどある。
好きな物を食べるのはいいけど、でもね。
「野菜も食べなきゃ駄目でしょ。」
今日もイルカ先生を引っ張ってスーパーに野菜を買いに行く。
「はーい。」
イルカ先生は拗ねた感じで返事をしているのに顔は笑っている。
嬉しいのかな。
仕方ないなぁ。
でもねえ。
こういうのが俺も嫌いじゃないんだよねぇ。
好きな人のために、あれこれするってのがね。
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