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fever!



夜も更けて、明日に日付が変わろうとする頃。
一人、怒っている男がいた。
若かりしカカシ十代。
夢に夢見て恋に恋して、光り輝く青春を生きている年代だ。
「あんのカワイイ中忍め!」
装着して暗部面を外して、面の表をを見て、わなわなと震えている。
「からかわれたー!ちっくしょー!」
いささか言葉遣いが悪い。
ムカつくー!と暗部面を地面に投げ捨てていた。
地面に投げつけられた暗部面には、ぴしぴしと皹が入る。
その暗部面の動物の顔が描かれた余白には・・・。
あろうことか、文字が書かれていた。
油性の黒マジックで、でかでかと。
『私は写輪眼のはたけカカシではありません』と。



「どーりで!」
暗部なのに面を取って素顔に晒し、カカシは叫んでいる。
「今日、闘ったとき!敵が超微妙な顔をしていたはずだよ!」
めっちゃくちゃ恥ずかしいじゃん、オレって!とカカシの声が辺りに響き渡った。
暗部なのに興奮あまり、息切れを起こしてしまっている。
カカシの怒りは周囲の者に向いた。
「なんで!誰も教えてくれなかったのさ!」
面を見たら、一発で分かることなのにー!
八つ当たりもいいところだ。
「だってよー」
カカシの様子を遠目から見ていた暗部の仲間が億劫そうに答えた。
「その面を大喜びで、今日の朝、着けていたのはカカシだろ」
鋭い指摘をされる。
存在を消して暗躍する暗部なのに、そこんところはラフなのかカカシの名前は知れ渡っているのが何ともいえない。
「ここに物資の補給に来た、あのカワイイ中忍に面を着けてもらったんだ〜って鼻の下を伸ばしていたじゃないか」
「面を着けていたから顔は見えないのに、どうして分かるんだよ?」
「勘だ。あと年の功」
仲間は、きっぱりと言い切った。



「だってさあ」
さきほどまで怒りを露にしてカカシは途端に態度を変えた。
なんだか急に、にやけている。
「だってー、あの中忍、かわいかったじゃんか」
「・・・ノーコメント」
仲間は無難にコメントを避けた。
男が男に可愛いなんて絶対に思わない、と確固たる意思を貫く。
対してカカシの顔は、やに下がっていた。
ちなみにカカシも、カワイイ中忍とやらも男である。
「えー、カワイイよー」
尚もカカシは言い募った。
「昨日、物資を運んで来たときだって、いの一番に俺に話しかけてきたじゃない。俺の気を引きたかったんでしょ」
「・・・それは、この陣営に留守番でカカシだけしかいなかったからだろ」
「すぐに帰らなきゃ行けないのに疲れたから帰りたくないって、俺のテントで一緒に寝たいって我が侭言ってさ」
「・・・それは、お前が無理矢理に中忍を引き止めたからだろ」
「面食いだなんて俺の格好いい顔を見てから言うしー」
「・・・それは勝手にカカシが顔を見せたんだろ」
「恋人には経済力も必要だとか言うしー」
「・・・それはカカシのことを暗に避けたかったんじゃいのか」
「あの中忍の恋人の条件に、ぴったり合致するじゃない、俺」
中忍の顔を思い出したのか、カカシはうっとりとしている。
はしゃぐカカシから仲間は、そっと目を逸らした。
そして昨晩のことを思い出していた、額を押さえながら。
頭の痛くなるような、カカシとカワイイ中忍の遣り取りを。



昼間、一人で暗部の陣営を留守を預かっていたカカシの元へ仲間が戻ったとき、カカシは一人の中忍に絡んでいた。
その中忍は陣営に不足している物資を運んで来た者だ。
まだ幼さの残る顔で少年といっても、おかしくない年齢に見えた。
重ねて付け加えると列記とした男性だった。
「ねー、もう帰っちゃうのー?」
「はい、物資を運んだら責任者の方にサインをいただいて帰還せよとの任務ですので」
「えー、そんなのヤダなあ」
中忍は暗部のカカシに慇懃無礼な態度だ。
あくまで礼は欠かさず、それでいてカカシから視線を逸らすように俯いている。
「いいじゃない、もっとここにいてよ」
「そう言われましても」
よく見るとカカシの手は中忍の手に重なってた。
暗部の象徴ともいえる鉤爪はしていない。
更に、よく見ると指と指が絡んでいる。
なんというか、恋人同士がよくするような手の繋ぎ方だ。
「ねえねえ、いいでしょー」
ずいっとカカシが近寄ると中忍は一歩退いた。
にこにこと笑顔のカカシが一歩近づき、引き攣った顔の中忍が一歩退く。
無言の攻防が続く。



「もー、照れちゃって。カワイイなあ」
「可愛くなんてありません」
「あ、これって流行りのツンデレ?」
「・・・デレませんので」
中忍は、さり気なく繋がれている手を取り返そうと引っ張ったが、カカシの力は強い。
そんじょそこらの忍では力比べでは到底、勝てないだろう。
最初は、さり気なく手を引っ張っていて中忍だったが外れないことが分かるにつれ、露骨に手を引っ張り始めた。
「手、離してください」
「いいじゃない、このくらい。恋人みたいで。あ、恋人いるの?」
「そんなことより、手を・・・」
「じゃー、俺の恋人になってよ」
「え、こいび・・・」
カカシの言葉に、ぎょっとして中忍は動きを止めた。
逸らしていた視線でカカシを見つめる。
「は・・・。何を・・・」
「だって恋人いないんだったら、俺がなってもいいでしょ」
「よ、よくないです」
ようやく反撃に出た中忍は弱弱しい。
「あ、あの、えーと・・・」
とんでもない話の展開に明らかに戸惑っていた。
中忍が動きを止めた隙を突いてカカシは近距離に位置を取る。
二人の間には、もはや隙間がないほど近くなっていた。
「え、えと」
遠目からでも額に冷や汗を掻いているのが分かる中忍は助けを求めて、周囲を見回したのだが暗部の仲間は姿を隠していて見つけられない。
物資を運んで来たのは中忍一人であった。



「あー、俺、面食いなんで」
中忍は頑張っていた。
「すっごく面食いなんです、だからキツネの面の顔の人とはお付き合いできませんので」
「あー、そう?」
くい、とカカシは躊躇なく、あっさりと面を外した。
「どう?」
無駄に格好いい笑みを浮かべる。
「面食いの基準はクリアしているでしょ?」
嫌味なくらい自信満々だ。
「あ、えーとですね」
かなり長い間、カカシの素顔に見蕩れていた中忍は、ぶるぶると頭を振った。
「あー、あと面食いの他にも経済面でも優れている人が好みなんです!」
「あー、大丈夫」
そっとカカシが中忍の耳元で何事かを囁いた。
「えっ!そんなに!」
驚愕した中忍が、まじまじとカカシを見る。
「すごいでしょ、俺の貯金の額」
「え?ええ、ええ、はい」
中忍は、こくこくと頷く。
よほど驚いたのか、カカシの手を引き剥がすことも忘れている。
そのことに気をよくしたのか、以後、カカシのペースで事は進んだ。
「じゃ、今夜はここに泊まっていきなさいよ。あ、俺のテントで休めばいいからね」
帰還が遅れる連絡は、俺が責任持ってしておくから、と。
そうして中忍はカカシのテントに連れ去られてしまった。
カカシと関わると碌なことがないと経験上、身を以って知っていた暗部の仲間は心の中で中忍に、そっと手を合わせた。
すまない、と。
俺たちの力ではカカシはどうにもならない、と。
ついでに、お付き合いを断るなら男同士だということが一番の理由だろうと突っ込みを入れることも忘れなかった。



次の日の朝。
カカシのテントから出てきた中忍は眠そうだった。
どことなく疲れていた風で。
昨日は頭の天辺で結っていた髪が解けており、素顔を晒しているカカシがその髪をせっせと手で梳いたりしていたけれど暗部の仲間は見なかったことにした。
中忍は大きな伸びと欠伸をしながら言った。
「テントの寝床に男二人は狭いですよね」
「まあ、そうね」
「寝返りも打てないし」
「寝相が悪かったねー、イルカ」
「そうですか〜」
へらっと笑った中忍の名はイルカというらしい。
「やっぱり、自分ちの布団が一番ですね」
また、欠伸をしながら「枕が変わると眠れないって本当ですね」なんて言っている。
「さて、と」
振り向いたイルカは肩を竦めた。
「俺は帰らなきゃいけませんので」
「そう?残念〜」
カカシが眉を顰める。
「ずっと、ここにいたらいいのに」
「そういうわけにはいきませんよ」
二人の口調が砕けている。
昨夜、一緒に寝て、もしかして仲が深まったのかもしれない。
カカシが希望する恋人ではなく、同年代の若者としての。
「じゃあさー」
カカシが、ちょんちょんと自分の頬を突付く。
「お別れのチューしてよ、恋人でしょ。それと面を付けてくれたら嬉しいな」
自分の狐の面をイルカに差し出す。
「・・・いいですよ」
複雑な顔をしたイルカが一応、了承した。
「じゃ、目を瞑ってもらえますか?」
「うん」
素直に返事をしたカカシは素直に目を瞑る。
「いいって言うまで開けちゃダメですよ」
「はーい」
その返事を聞いてイルカが、にやっと笑った。
悪戯っ子の顔だ。
どこから取り出したのか、手には油性の黒マジックを持っている。
狐の面にサラサラと何かを書く。
それから、カカシの頬に触れるか触れないかのチューをしてから、急いで面を付ける。
面には文字が書いてあった。
それを読み取った暗部の仲間たちは噴出しそうになったのだが、辛うじて堪えた、暗部だから。
気配を察したイルカが振り返り、ウインクしてくる。
声を出さずに口が動く。
『内緒ね』。
そう読めた。
・・・イルカは茶目っ気があるようだ。
「はい、いいですよー」
イルカの声を合図にカカシが目を開けた。
「お面、似合ってますよ」
にこ、と微笑んだイルカが言うとカカシが「そう?」と嬉しそうにしている。
「では、これにて帰還致します。任務、頑張ってくださいね」
ぺこり、とイルカが頭を下げて去ろうとするとカカシが引き止めた。
「ねえ、もう一回会えるよね?恋人なんだから」
「ご縁がありましたら」
無難な返事をしてイルカは去って行った。
そして、話の冒頭に戻る。



「もー、イルカってば、こんなことしちゃって」
地面に投げつけた面を拾ったカカシは、普通とは違う解釈をしたようだ。
からかわれたと思わず、別のことを思ったのだ。
「これってツンデレ?やっぱ、カワイイよねえ」
俺に忘れてほしくなくて、こんなことしたんだよねーと、にやけている。
「イルカってば、照れちゃって〜」
俺の気を引こうと必死なんだから〜と言うカカシから仲間は目を逸らし、明後日の方向を見る。
・・・それは違う、と言いたかったが言えなかった。
「この任務が終わったら、会いに行くからね〜、イルカ」
カカシは、うきうきしている。
「会いに行くから、二人の愛を育もうねえ」
下手な駄洒落も言っている。
「昨日の夜はラブに発展するかと思ったら、イルカってば、すぐに寝ちゃって」
焦らすのが好きなのかなあ、とカカシの妄想のような想像は膨らんでいく。
「会いに行くからね、待っててね、イルカ」
うふふふ〜、と笑うカカシは幸せそうであった。
たとえ、今は一方通行の愛だとしても。





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