安心してね
イルカ先生が熱心にテレビを見ている。
普段は余り見ない人なのに、珍しいことだ。
何を見てるんだろう?
興味が出てイルカ先生の隣に座って一緒にテレビを見た。
なあーんだ。
なんてことない。
ワイドショーで、どっかの俳優が結婚するとかで、その会見を生中継していただけだった。
つまらない。
イルカ先生、何で見てんの?
そう思って、隣のイルカ先生をみてギョッとする。
瞳がキラキラしてホッペが紅潮気味。
ど、どうしたの?
「結婚するんですねえ。」
イルカ先生がうっとりと言った。
「良かったですねえ。俺、この俳優さんが大好きなんです。」
なんですと!
大好き!だなんて俺は片手で数えられるくらいしか言ってもらってないのに。
「幸せになってほしいです。」
・・・俺以外の人のことなんて思わないでよ。
確かに、この俳優はそこそこ顔も良いし渋い感じだ。
が、俺より一回り以上年上だ、どこがいいんだ?
イルカ先生は会見の途中で俳優の結婚相手が自分と同い年だと分かるとショックを受けていた。
「俺と同じ年齢の女性と結婚するなんて・・・。」
絶句しているが、こっちが絶句だよ。
いったい、どういう意味なんだ?
ようやく会見が終わり、イルカ先生はテレビを消した。
俺はほっとしたが、訪れる沈黙。
そんな中、イルカ先生がぽつりと呟いた。
「父さんみたいな感じの人だったのに。」
んん?そうか!
「イルカ先生は、さっきの俳優がお父さんに似ているような気がして好きだったんですね。」
「え、ええ。」
なあーんだ。
いろいろと心配して損した。
「ファザコン故の恋しさが、あんな俳優に向かっていたんですねえ。」
「ちょっと!ファザコンじゃありません!」
イルカ先生は大声で否定したけど俺は憂いがなくなってウキウキ。
あの俳優が大好きなのは、お父さんが大好きだから。
単にお父さんの面影を求めていたのね。
「大丈夫、大丈夫。父親恋しさは俺の愛でうめてあげますからね〜。」
ぎゅーっとイルカ先生を抱きしめる。
「俺はイルコンですからね〜。安心してね〜。」
イルカ先生は「離せ!」と暴れていたけど離してなんてやるもんか。
一生抱きしめ続けてやる。
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