その言葉
休みの日、ぶらぶらと里を歩いていると向こうからイルカ先生が歩いてくるのが見えた。
俺は忍服だけどイルカ先生は私服だ。
イルカ先生も今日は休みらしい。
髪も下ろしていて、なんだか別人みたいだ。
普段はアカデミーの先生なんてしているから、きりりとした印象があるのだけれど私服になるとガードが取れて柔らかく可愛い印象になる。
っていうのは俺の惚れた欲目なのかもしれないが、そう見えるんだから仕方がない。
イルカ先生は俺と同じ同性で男だったけれど、それを差し引いても優しくて穏やかで明るくて、とても魅力的な人で惹きつけられてしまう。
つまり俺が好きになるのも無理はないということだ。
・・・といっても、この気持ちは胸の奥に隠していて、まだ伝えてはいないけど。
「あ、カカシ先生。」
イルカ先生の方から俺に気がついてきて声を掛けてきてくれた。
手を振って駆け寄ってきてくれる。
「こんなところで会うなんて奇遇ですね。」
にこ、と笑った。
「そうですね。」
俺は心寄せている人と偶然でも会うなんて運命のような気がするが。
「カカシ先生も今日はお休みなんですか?」
「ええ、まあ。」
「俺も久しぶりの休みなんですよ。」
日用品が切れていたので買出しに来たんです、とか言っている。
「休みなのに家のことするしかないなんて色気のない話ですよね〜。」
あはは、と軽く言っているが俺は内心、ほっとする。
それでいい。
イルカ先生の隣は、いつか俺がゲットする予定なのだから。
「あ、もうお昼ですね。」
イルカ先生が時計を見て言った。
「よかったら、お昼でも食べませんか。」
誘ってきてくれた。
もちろん俺は異論はない、むしろ大歓迎だ。
適当な食事処に入って俺達は向かい合わせで席に着く。
上着を羽織っていたイルカ先生は店の中が暑いのか、上着を脱いで椅子に掛けた。
だが俺は、その下に着ていたイルカ先生の服を見て固まってしまった。
それは白いTシャツで字が書いてあった。
筆を使って書いたような文字で、でかでかと。
『愛してほしい』って。
余りにも俺が見すぎたせいかイルカ先生が俺の視線に気がついた。
「あ、この服ですか。」
苦笑いをする。
「この前、アカデミーの飲み会でやったビンゴの景品なんですよね。」
「へ、へえ〜。」
「洗濯物溜め込んでいたので、洗濯したら着る服がなくなちゃって・・・。」
仕方なく、これ着てきましたって言っている。
「ビンゴの景品て変なものが多いですよね〜。」と笑っているが俺は心の底から思った。
イルカ先生が、そのTシャツに書いてある言葉を俺に言ってくれたら、すぐさま実行するのになあ。
恨めしいような羨ましいような気持ちで俺は、その言葉を眺める。
そして、なるべく早くイルカ先生に告白してみようと思ったのだった。
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