愛の色
今日の俺はお休みでイルカ先生はアカデミーに出勤だった。
イルカ先生は出勤前に「申し訳ありませんが。」と本当に申し訳なさそうな顔をして俺に頼んだ。
「洗濯お願いしていいですか。」
そんなこと、オッケーオッケー。
お安い御用だ。
俺が、そう答えるとイルカ先生は、ほっとした顔になって「最近、忙しくて洗濯が溜まっていたので助かります。」と言った。
洗濯なんて俺の分もあるのだから、俺がするのも当然なのに律儀な人だなあ。
「ありがとうございます。じゃあ、よろしくお願いしますね。」と頭を下げて玄関を出て行く時にイルカ先生は思い出したように俺を振り返った。
「洗濯物に赤いTシャツがあるんですが、あれだけ別に洗ってもらえますか?色落ちするんです。」
「あ、了解で〜す。」
イルカ先生の額に行ってらっしゃいのキスをするとイルカ先生は恥ずかしそうにしながらも嬉しそうな顔で出勤していった。
幸せそうに、そんでもって少しだけ目元を色っぽく染めて。
そんなイルカ先生って何度も見ても飽きないし可愛いし、俺は何度でもキスしたくなる。
俺はキスした余韻に浸っていたのだがイルカ先生に頼まれたことを思い出して早速、洗濯に取り掛かった。
外はいい天気で暖かい陽射しが降り注いでいる。
洗濯物もよく乾くだろう。
乾いたらお日様の匂いが、たくさんするな〜。
俺は洗濯物を干しながら、鼻歌でも歌いたくなってきた。
俺とイルカ先生の洗濯物を並べながら干すのは楽しい。
すっごく楽しい。
なんていうか、お互いの衣類を洗濯物してもらう間柄って何もかも許しあった仲に見えないかな〜?
イルカ先生の家の窓辺に干した洗濯物は通りから丸見えだけど、明らかに二人分と分かる洗濯物が干してあるのは、こう俺とイルカ先生の仲を自然に主張できていいよね。
そんなこと考えて、うきうきとした俺は洗濯籠の中の服を取り出して、ふと思った。
それはピンク色のTシャツだった。
ピンク色のTシャツなんて、あったっけ・・・。
白いTシャツならあったはずだけど。
ピンク色のTシャツは可愛らしく自分の存在を主張している。
疑問に思いながら次の洗濯物を手に取ると、ピンク色の謎が解けた。
俺、赤い色のTシャツも一緒に洗っていたのだ・・・。
イルカ先生に色落ちするから、と注意を受けたのに忘れてしまったのだ。
干した洗濯物を、よくよく見ると薄っすらと赤みがあったりピンクに染まっていたりしている。
・・・やばい、どうしよう。
ピンク色掛かった洗濯物が、ひらひらと風に揺れている。
そりゃピンク色になったって着れないことはないけれど、でもさ。
失敗しちゃったよ・・・と俺は落ち込む。
夕方、イルカ先生の帰宅を待ちながら俺は夕飯を作っていた。
作りながら考える。
洗濯物のこと、どう言おう。
多分、イルカ先生は怒らないと思うけど呆れるかもしれない。
少し、どきどきしてくる。
頼んだこともできないなんて駄目なやつだよなあ。
でも言わないでいても、いずれはバレる。
必ずバレる。
だったら、その前に自分から言ってしまった方がいいよね。
よし!
潔く言って謝ろう。
俺が決心した時にイルカ先生が帰って来た。
「ただいま〜。」
玄関の方からイルカ先生の声がする。
「いい匂い〜。カカシさん、ご飯作ってくれたんですね。ありがとうございます。」
家の中に入ってきたイルカ先生に、にこにこしながら御礼を言われた。
「いいええ。こんなことくらい、いつだってしますよ。」
俺はイルカ先生の頬にお帰りなさいのキスをする。
イルカ先生も照れくさそうにキスを返してくれた。
「あ、洗濯もありがとうございます。」
部屋の隅に畳まれた洗濯物をイルカ先生は見つけた。
「今日は天気も良かったので洗濯日和でしたね。」なんて言う。
「そうですね・・・。」
俺は一番下に隠すようにしてあった例のTシャツを取り出すと、ばっとイルカ先生の目の前に差し出した。
「ごめんなさい!」
「え?」
「赤いTシャツ、別に洗うの忘れて一緒に洗ったら色落ちして・・・。」
ピンク色になりました、と。
俺が殊勝に謝るとイルカ先生は「いいんですよ。」と笑っていた。
「怒らないの、イルカ先生。」
「だって実は俺も何回も色落ちさせてますから。今日は偶々、思い出してカカシさんにお願いしましたけど、つい忘れちゃいますよね。」
イルカ先生は「可愛いピンクになりましたね。」とTシャツを見ている。
おまけに「カカシさんに似合いそうですね。」なんて宣う。
そうかなー。
どちらかというとピンク色はイルカ先生に着て欲しい。
意外にイルカ先生は柔らかい色合いの服が似合うのだ。
ピンク色も似合うに違いない。
それにね。
「可愛いピンクって、まるで俺みたいですから。」
「カカシさんみたいって?」
イルカ先生が不思議そうな顔をする。
「俺の愛の色は、きっとピンク色ですよ。」
俺の愛の色は可愛いピンク色に決まっている。
たくさん、愛のつまったピンク色。
俺の愛の色の服を着てほしい。
そう言うとイルカ先生は「大の大人が、何言ってるんですか。」と一蹴していたけど顔は可愛らしいピンク色に染まっていたのだった。
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