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SurpriseBirthday



イルカは任務を受けて、里の外に出ていた。
上忍にくっ付いて、指定された物資を運ぶ。
それだけだ。
終われば、里に帰れる。
くっ付いていた上忍は連絡係りも担っており、各所と連絡を取らなければならない。
なので、物資を運び終えたらイルカだけ先に里に帰されることになっていた。
ただ、物資の運び先が問題だった。
上忍だけしかいない場所。
別の任務に向う上忍が複数人、休憩をしている森の中にある場所だ。
・・・上忍。
中忍のイルカにとっては怖い存在だった。
上忍は強くて頼りになる、だけど怖い。
気配も殺気も中忍のイルカとは段違いで、毎度毎度、上忍には力の差を見せ付けられている。
まあ、もっと自分が強くなればいいと思うんだけど・・・。
修行も鍛錬も、人一倍こなしているのだが、如何せん、上忍と中忍の差は埋まりそうもない。
物資を届けた先の上忍を見て、イルカは思った。
やっぱり怖い。
早く里に帰りたい。
里の空気が無性に恋しかった。



「なるほど・・・」
物資を受け渡して、イルカがくっ付いてきた上忍は相手方の上忍と何事かを話して頷いている。
「そうか。だったら至急、伝令を飛ばす必要があるな」
真剣な顔だ。
「早く知らせてやらないと」
何か問題が起こったようだった。
「しかし、俺はこれから別の場所に移動しなきゃならないんだ」
「こっちも人手は割けないぞ」
「そうだな」
自然と話している上忍たちの視線はイルカに集まる。
「この中忍は?」
「ああ、もう里に帰るだけだ」
「だったら、少し寄り道してもらえないだろうか」
「里に会えるルートに、あいつらはいるんだったな」
何やら、雲行きが怪しい。
イルカは心の仲で身構えた。
・・・もしかして、俺、別の任務もするのかな?
少し、わくわくする。
自分が必要とされることは嬉しい。
「ちょっと、いいか」
手招きされて、イルカは上忍に近寄る。
「はい、何でしょうか?」
「うん、これを届けてほしいんだ」
一つの巻物を手渡された。
「里に帰る途中の・・・」
詳しい場所を伝えられる。
「そこに木の葉の上忍が何人かいるはずだから、この巻物を渡してほしい」
「上忍?」
「そうだ、俺の名を出せば話は通じるはずだ」
「分かりました」
上忍と聞いて、一気に気が重くなる。
顔には出さなかったが。
「なーに、渡すだけだから難しくない。渡せば終わりだ」
そして里に帰ってよい、と指示される。
「了解しました」
「頼むぞ」
イルカは懐に渡された巻物を仕舞いこむと一礼し、その場を後にした。



走りながらイルカは胸をドキドキさせていた。
・・・上忍だらけだな。
向う先にも上忍。
上忍の活動には目を見張るものがあるが、しかし怖いものは怖い。
上忍の不興を買えば、恐ろしい制裁が待っているという一部の噂もある。
しっかりしろ、俺。
自分で自分に叱咤激励する。
・・・同じ里の忍じゃないか。
だから怖くないはず。
自分を励ました。



伝えられた場所は、すぐに分かった。
気配は綺麗に消されているが、その場所に行くと忍がいたのだ。
みな、木の葉の額宛をしている。
「あ、あの・・・」
最高に胸をドキドキさせながら、イルカは静かに上忍たちに近づいた。
「すみません、巻物を持って参りました」
指示された通りに上忍の名を出して、巻物を渡した。
「おお、待っていたんだ。すまないな」
巻物を渡した上忍はイルカに気軽に声を掛け、笑顔を見せてくれた。
「急で申し訳なかったなあ、余計な仕事をさせちまって」
「いえ・・・」
大柄で髭の生えた上忍は気さくだった。
穏やかな雰囲気を漂わせている。
ほのかにタバコの匂いもする。
少しだけイルカは、ほっとした。
・・・よかった、あんまり怖くない人だ。
「では、私はこれで」
失礼致します、とイルカが一歩、退いたときだった。
どん、と背後のいる何かにぶつかり、動きが止まる。
何だろう?とイルカが顔だけで後ろを見ると、そこには・・・。
無表情で立つ忍が一人した。
片目を額宛で隠して、銀色の髪が逆立っている。
出ている片目でイルカを見下ろしているのだが、そこには何の感情も見られない。
何より、覆面で顔の半分以上を覆い隠しているので、何を考えているのか、中忍のイルカでは到底、計り知れなかった。
「す、すすすす、すみません!」
激しく動揺したイルカは慌てて謝罪し、ぶつかった上忍から離れようとしたのだが。
動揺の余り、ぶつかった上忍の足を踏んづけてしまった。
「あああっ!すみません、ごめんなさい。態とじゃないんです」
ひたすら、頭を下げる。
上忍にぶつかって、しかも足を踏むなんて。
そんなことを中忍の自分が上忍にするなんて、これは最早、消されてもおかしくない。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
ぐるぐるとイルカの頭の中は混沌と混乱が混ざり合って、渦巻いてしまっている。



「こら、カカシ」
そんなイルカを救ってくれたのは巻物を渡した髭の上忍だった。
「からかうな、怖がっているだろう」
嗜めてくれた。
件の上忍はポケットに手を突っ込んで、猫背で姿勢が悪い。
言葉遣いも適当だった。
「そんなんじゃあ、な〜いよ」
ぶっきら棒に話す。
「じゃあ、何なんだ?」
それには答えず、猫背の上忍はイルカに向き直った。
正面から見ると、やはり上忍。
迫力が違う。
「アンタさあ」
イルカに言っているのだろう。
「誕生日っていつ?」
唐突に聞かれて、イルカは虚を衝かれた形になる。
思ってもみない質問だったので、返事が出来なかった。
「・・・・・・は?」
聞き返してしまう。
誕生日?今、誕生日って言った?
話しに全く脈絡がない。
何で、ここで誕生日?
ちっとも訳が解らない。
「ねえ、誕生日っていつなの?」
猫背の上忍は重ねて聞いてくる。
「え、えと、ですね」
今日の日にちを思い出し、自分の誕生日を告げた。
「あの、今日なんですけど」
自分でも忘れていたが今日だった。
「今日?ふーん・・・」
出ている片目が急に感情を帯びる。
愉しげに光を放つ。
細めた目が何か企むような、悪い事を前触れのような。
そんな気がする。
「それは好都合」
呟かれた内容を聞き、急に目の前の上忍が怖くなったイルカは、その場を辞することにした。
髭の上忍に挨拶をする。
「巻物は確かにお渡ししました、それでは、これで失礼致します」
「おう、ありがとな」
最後に怖かったが猫背の上忍に頭を下げると。
イルカは全速力で、その場を後にした。



森の中を疾走する。
一刻も早く里に帰りたかった。
木の葉の里に。
先ほどのドキドキも収まりつつある。
怖かったなあ、あの上忍・・・。
胸を押さえる。
怖くない上忍がいるのも解ったが、やはり怖さは拭えない。
そんな中、雨が降り出してきた。
ざあざあと音を立てて降り始めた雨は大粒だ。
大きな雨粒がイルカの体のそこかしこに当たる。
忍服が濡れて冷たくなってきた。
濡れた忍服は重い、しかも雨で足場が悪くなり進行が遅くなってしまう。
どこかで休んだ方がいいかな・・・。
雨が小降りになるのを待つのが得策かもしれない。
雨宿りするか、とイルカが決めた時だった。
後方に、とんでもない気配を感じてイルカは振り向いた。
姿はない。
気配だけは濃厚に感じる。
・・・敵かもしれない。
この感じる気配から、イルカは決して自分が敵う相手ではないと即座に判断した。



敵わない相手には、唯一つ。
逃げるだけだ。
逃げるが勝ちと言う言葉もある。
雨に打たれながらイルカは走った。
どうか、逃げ切れますように。
木の葉の里に帰れますように。
こんなところで死にたくはない。
いざとなったら最期まで闘う覚悟は出来ているが、それでも・・・。
雨がイルカの痕跡を消してくれればいいが、上忍クラスなら雨くらいで追跡を撹乱させることは難しい。
気配は、どんどん迫っている。
追いつかれるのも時間の問題だった。
どうする・・・。
決断の時が迫られる。
中忍のイルカに出来ることなど限られているが。
その限られた範囲の中で出来る策を練らなければならない。
例え、それが徒労に終わっても、だ。
「あっ!」
考えに足を取られ、イルカの足が滑った。
雨で濡れて、それでなくても足場が悪い。
おまけに木の上で。
足が滑れば落ちるだけ。
受身を取ろうと体を捻るが上手くいかない。
無様にも地面に激突するだろうことを予測して、イルカは目を閉じてしまった。
しかし、衝撃はいつまで経っても来なかった。



雨に打たれながら、恐る恐る目を開けるが視界が悪くて状況が判らない。
イルカは地面から浮いているような感覚があった。
「な、なに?」
目の上に手を翳しながら雨を避けると、声がした。
「危ないで〜しょ、もう」
聞き覚えのある声に体が固くなる。
「木から落ちるなんて、それでも忍?」
まあ、俺が来たから良かったけどね。
声の主は猫背の上忍であった。
なぜ、ここに?
驚き過ぎて声が出ないイルカの体を上忍は両腕で抱き上げている。
「さてと、どっかで雨を避けないと」
雨の中、すたすたと歩き始め、程なくして雨を避けられる岩陰を見つけた。
「ここなら、いいでしょ」
そっとイルカは降ろされる。
状況が判らないイルカは猫背の上忍の為すがままだ。
「はい、これ」
上忍は懐から巻物を取り出した。
イルカが届けた巻物とは違う物だ。
「さっき、アンタが届けた巻物の返事だってさ。里に帰ったら、火影さまに渡しておいて」
「・・・・・・はい」
上忍は、これを届けるためにイルカを追ってきたのだ。
なんだ、そうだったのか。
ようやっと、状況が飲み込めたイルカは安堵の息を吐いた。
良かった、敵じゃなかった。
・・・でも上忍だった。
とりあえず、安心すると寒気がイルカを襲ってきた。
濡れた服が冷たい。
体が震えてきた。
震えを堪えながら隣に座った上忍を見ると、こちらはケロッとしていた。
上忍と中忍では体の出来も違うのか。
イルカと同じく、ずぶ濡れなのに顔色一つ変えてない。
ただ、濡れているというだけで。
逆立っていた銀髪も今は濡れて垂れていた。
座り込んだイルカは震えを止めようと、自分の腕で自分の体を抱きこむが、そんなことで冷えた体が温まるはずもなく。
震えは止まらず、どちらかというと酷くなってきた。
早く家に帰って風呂に入って、あったまりたい。
イルカは叶わぬ願いを切望してしまう。



そんなイルカに気づいているのか、いないのか。
「あのさあ」
上忍は何やら言いたげであった。
「あのさあ、えーとさ」
「は、はい」
寒くて唇が震えているので、声が震えないようにイルカは言葉を発した。
不意に上忍は体の向きを変え、イルカを見た。
出ている片目がイルカを捕らえる。
そして言われた。
「誕生日、おめでとう」
「・・・・・・・・・え?」
この上忍には度々、驚かされる。
「誕生日のプレゼントは何がいい?」
そんなことを聞かれても返答の仕様がない。
猫背の上忍の考えていることは理解不能だ。
どうして今日会ったばかりのイルカに誕生日のお祝いを言い、その誕生日のプレゼントを贈ろうとするのか。
そんなことをされる覚えも義理も何もない。
「ねえ、プレゼントは何がいいの?」
再度、聞かれて答えようがなかったイルカは思いのままに言葉が口から出てしまった。
「なんで?」
「なんでって、何が?」
逆に聞き返された。
「何がって・・・。なんで、誕生日のプレゼントを・・・」
俺に?
ごく自然な疑問が生じるのは仕方のないことだ。
「あー、それはねえ」
ほら、と上忍は人差し指を立てた。
「好きな人へのサプライズはクリスマス、バレンタイン、誕生日って相場が決っているでしょ」
得意げにしている。
何の相場だ?とイルカは眉を顰める。
いや、その前に何か変なことを言っていた。
好きな人だとか、サプライズだとか。



「鈍いなあ〜」 上忍は呆れたように言った。
「アンタが好きだって言ってんでしょ」
「はあ?」
相手が上忍だということも忘れてイルカは大きな声を出してしまった。
「俺を好き?なんで、どうして?さっぱり解らないですけど」
いつ、どこで、告白なんてされただろう?
「告白なんてされてないし。だいたい、会ったばかりで何も知らないのに」
どこに愛だの恋だのが存在するんだ?
疑問符ばかり浮かべるイルカに上忍は覆面を下ろす。
ついでに片目を覆っていた額宛もあげる。
素顔を晒してきた。
真面目な顔をすると格好いいというよりも、見目麗しい。
「初めて見たときから好きになりました。付き合ってください」
「俺の、ことが?」
「そう」
上忍は頷いた。
「初めてアンタを見て、なんて俺好みの子なんだろうって一発で惚れました」
「男・・・ですけど」
「気にしないから大丈夫」
「気にしないって言われても」
「好きです」
愛してます、と言われてもイルカは戸惑うだけだった。
「いきなり、そんなこと言われても」
言われても困る。
「こんな愛もあるでしょ」と言われても困るのだ。



名も知らぬ、会ったばかりの人間に愛の告白をされてもピンと来ない。
「で、返事は?」
返事を求められても、もっと困るばかりだ。
返答に窮していると上忍は勝手に決め付けた。
「返事がないってことはイエスってことですね」
「いや、ちが・・・」
「里に帰ったら会いに行きますからね」
宣言された。
「そしたら、誕生日プレゼントを渡します」
イルカの意思とは関係なしに話が進んでいく。
「で、今、一番欲しいと望むものは?」
それには素直に答えてしまった。
だって寒かったから。
「熱い風呂に入りたいです」
「風呂かあ」
無表情だった上忍の顔がだらしなく緩んだ。
にや〜っと。
「いきなり、そう来るとはねえ」
やられた〜、とじゃ言いながらも嬉しそうにしている。
「じゃあ、里に帰ったら風呂に一緒に入りましょうね」
うきうきしていた。
「そうじゃなくて、あのですね・・・」
誤解を解こうとしたのだが、その前に。
すくっと立ち上がった上忍はイルカを振り返る。
「そろそろ、戻らないと」
いつの間にか、雨は上がっていた。
「じゃあね」
イルカもつられて立ち上がる。
「またね」
誕生日おめでとう、大好き、愛してる。
そんな言葉をイルカに残して上忍は行ってしまった。
別れ際、イルカの頬に唇で触れて。
「なんなんだ、あの人」
唇で触れられた頬を触ると熱い。
「本当になんなんだ・・・」
先ほどまで寒かったはずなのに、体が熱くなっている。
「愛してるって」
自分の言った言葉に赤くなるイルカ。
これって愛か、と思うと益々、赤みが増す。
「早く里に帰ろう」
イルカは里に向って走り出した。
次に、あの上忍に会ったときは、ちゃんと名前を聞こうと思いながら。
上忍に対して怖いという感情はなくなっていたのだった。






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