悩んだ誕生日
イルカ先生からプレゼントの選択を迫られて俺は迷いに迷った。
夜も眠れないほどに。
眠っても夢に見てしまうくらい悩んでしまった。
うーん、どれにしよう。
イルカ先生のプレゼントは三つ。
交換日記に、イルカ先生の自宅の合鍵。
それに今のお付き合いを正式なお付き合いにすること。
どれがいいだろう・・・。
真剣に悩む。
悩んでしまう。
とうとう、誕生日、当日が来てしまった。
イルカ先生は俺に「誕生日は家にいてください、俺が行きますから!絶対ですよ」と念を押されていた。
俺は自分の家でイルカ先生を待っていればいいみたい。
「ケーキも料理も俺が用意しますから!」だって。
甘いものが苦手なのでケーキは食べれないかもしれないがイルカ先生の気持ちが嬉しい。
俺は酒でも用意して待っていよう、イルカ先生が好きな酒を用意してね。
仕事が終わった俺はイルカ先生と待つ間、やっぱり考えていた。
プレゼントはどれにしようかな、って。
交換日記はこれを逃すと、もう一生できないような気がする。
イルカ先生、交換日記なんて柄じゃないからなあ。
絶対にしてくれないだろう。
次は合鍵。
いざとなれば手に入れるのは容易いが、そんなことをしたらイルカ先生が怒るのは確実だ。
下手をしたら縁を切られるかも・・・。
それは嫌だ。
イルカ先生の意思で俺にくれるのが一番いい。
合鍵は、またもらえるチャンスがあるかなあ。
少なくとも交換日記よりは確率が高いかも。
うーん、合鍵、いいよね〜。
イルカ先生が合鍵をくれたら俺の家に鍵も渡すつもりだ。
いや、例えイルカ先生が合鍵をくれなくても俺は自分の家の鍵を渡してもいいと思っている。
イルカ先生なら、いつでも家にカモン!って感じだし。
それで最後。
これは俺が、ずっと願っていたことでもある。
イルカ先生とお付き合いで本番、じゃなくて本番のお付き合いをしたいと願い止まなかったのだ。
木の葉神社にも密かにお参りにも行ったりした。
イルカ先生とお付き合いできますようにって。
絵馬も描いてしまった、何枚も。
暗号の文字を使ったら解読は難しいので、そこんところは大丈夫。
誰にも分からない。
やっぱり、最後の三番目のお付き合いのお付き合いを止めて、お付き合いをするかなあ。
と、そこまで考えて家のドアのチャイムが鳴った。
玄関の前にはイルカ先生の気配。
俺は、うきうきと玄関に向ったのだった。
「こんにちは」
両手にスーパーの袋と思しきものをたくさん下げてイルカ先生は現れた。
俺の顔を見ないで視線を逸らしている。
すっごく俺を意識しているみたい。
「お邪魔します!」
きりっと言ったイルカ先生は俺の家に足音を立てて入ってくる。
「どうぞどうぞ」
俺は一気に顔が緩んだ。
イルカ先生がいる部屋はいい。
俺の部屋にイルカ先生の姿がある風景は実にいい。
ほよよーんと和んでいるとイルカ先生が「台所借りますね!」と言ってテキパキと何やら準備を始めた。
グラスも皿も箸も調味料も調理道具も場所が分かりやすいので心配はない。
冷蔵庫を開けられても全然平気。
少しして俺の家のテーブルには所狭しと料理が並んだ。
ケーキを中央に配置して。
「買ってきたのもありますけど」
控えめに言うイルカ先生。
でも作ってくれたのもあるし、俺は大満足。
とっても嬉しい。
「ありがと、イルカ先生」
お礼を言うとイルカ先生は、はにかんで顔を赤らめた。
お酒をグラスに入れて乾杯する。
「カカシさん、誕生日おめでとうございます」
イルカ先生が祝ってくれた。
「ところで何歳になったんですか?」と訊かれたので正直に言うとイルカ先生が俺を見て肩を落とした。
ふっと息を吐いている。
・・・俺、なんかした?
イルカ先生は「カッコいい人は得ですよね」とか何とか呟いている。
「え、俺って格好良いですか?
褒められて嬉しくなる。
そっかー、イルカ先生、俺のこと格好良い、素敵だ、頼れる人だと思っていたのか〜。
参っちゃうな〜と思っていたら口から出ていた。
イルカ先生は俺を呆れたように見て言った。
「カッコいい人は年齢を重ねてもカッコいいと思っただけです」
やっぱり俺のこと格好良いと思っているんだ〜。
嬉し〜、と思ってしまう俺。
にやけていたらイルカ先生が、がっとグラスの酒を飲み干した。
空のグラスに酒を注ぐと、また飲み干す。
それを三回くらい繰り返した後でイルカ先生が俺を見た。
「カカシさん・・・」
「はい」
イルカ先生、目が座ってないか?
「プレゼント・・・」
「ああ」
「決りましたか?」
それが訊きたかったらしい。
「ええ、まあ」
散々、迷って俺は決めた。
「決めましたよ」
「解りました」とイルカ先生は頷いた。
「俺にも覚悟は出来ています、言ってください」
覚悟、言葉が引っかかったけど俺は、とりあえず決めたことを告げた。
「交換日記でお願いします!」
「・・・・・・え?」
イルカ先生が大きく目を見開いて俺を凝視する。
驚いているみたい。
「今、なんて・・・」
「あ、交換日記でお願いしますって言ったんですが」
「・・・・・・こうかんにっき」
「はい、一年間できるんでしたよね、交換日記」
「そうですけど」
イルカ先生は目を、ぱちぱちさせている。
「それでいいんですか?」
「もちろん」
何回も確認されたけど俺の意思は変わらない。
「カカシさんが、それでいいなら」とイルカ先生も漸く、納得した。
まあ、他の二つも、途轍もなく魅力的ではあったけれども。
合鍵は俺が渡せば問題ないし、お付き合いの件は俺から時期をみて俺から申し出ようと思ったのだ。
願いは自分で叶えようと思っちゃったりして。
だから消去法で残った交換日記になったのだ。
交換日記を一年間もイルカ先生とできるなんてワクワクする。
ワクワクしすぎて、どうしようない。
つまりは来年の俺の誕生日まで交換日記ができるってことだろう?
来年の今頃、俺とイルカ先生の関係はどうなっているのか。
それにもワクワクどきどきだ。
どんなお付き合いをしているのか胸が高鳴る。
拍子抜けしたようなイルカ先生は、ほっとしたように笑っていた。
何かを想定して相当な覚悟をしてきたようだったけど。
イルカ先生の笑顔を見て俺の選択は正しかったと感じた。
急がなくていいよね。
お付き合いのお付き合いの関係は、ゆっくり進めていけばいい。
仲良くお酒を飲んで料理を食べて。
ケーキは一口だけいただいた。
それもイルカ先生が食べさせてくれて感無量。
最後にイルカ先生は「特別ですよ」と呟いて。
「ハッピーバースデー、カカシさん」
頬にキスしてくれたのだった。
text top
top