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悩ましい誕生日



なんだかおかしい、と俺は思っていた。
変だ、何かあると。
そう思ったのには原因がある。
それは知り合いの上忍によるものだ。
その上忍とは、はたけカカシ。



はたけカカシ、元い、はたけ上忍は俺のアカデミーの教え子だった子どもたちの現上忍師である。
初めて会った時から変だった。
子どもたちを通じて会ったのだけれど、俺が挨拶しても反応が鈍かった。
要するに「こんにちは」と挨拶しても「あ・・・」とか言われて俺の挨拶はスルーされた。
一応、上忍だから子どもたちを指導してもらっているからと我慢。
上忍は変わっている人も多いから、と自分を納得させた。
挨拶はスルーされたのに俺が礼儀上、初めましての挨拶のために差し出した手は何故か、がっちりと握り返された。
中忍には振りほどけないような力で。
力の差を見せ付ける気か、とその時は捻くれたことも考えたのだが現実は違っていた。
それは今思えば、はたけ上忍、元い、カカシさんの愛情だったのだ。
ちょっと解りにくかったけれども。



それからカカシさんの姿を目にすることが多くなった。
この人、子どもたちの指導もあるし、個人的な任務もあるしで忙しいはずなのに、どうしてか視界に入ってくることが多い。
圧倒的に多い。
一日のうちに朝、昼、晩、夜、早朝と時間を問わず、カカシさんの姿を目にした。
最初は俺の錯覚かと思ったけれど、そうではなかった。
一緒にいた同僚に「なあ、あの人いる?」と訊いたら変な顔して肯定された。
「いるけど、それが?」みたいな感じで。
思いっきり驚いたのは深夜のアカデミーでのことだった。
その日、俺は受付所の夜勤で家に帰ることが出来なかったんだけど。
そんな時に限ってアカデミーの仕事が気になって、それが早くに提出の必要がある書類だったりしたものだから、夜のアカデミーに書類を取りに行くことにした。
深夜の受付の休憩の合い間に。



夜のアカデミーって、めちゃくちゃ怖い。
忍者でも怖い。
日頃、大勢いる場所に人がいないから怖いのかもしれない。
賑やかなアカデミーが、しんと静まり返っている。
静か過ぎるのも怖くて。
不気味さに拍車がかかってしまう。
とりあえず、職員室から目当ての書類を持って、即効、戻ろうとしたら背後から声が掛けられた。
「こんばんは〜」
低く囁くような声は耳元でした。
恐怖で体が動かなく俺。
「イルカ先生〜」
名を呼ばれた時には、もう駄目だと思った。
何か分からないけど、もう駄目だ、もう終わりだって。
ぎゅっと目を閉じて恐怖をやり過ごそうかと思っていたのに、今度は正面から気配を感じた。
薄っすらと目を開けると見知った顔が。
前にいたのはカカシさんだった。
恐怖で心臓がばくばくしていた俺は思わず、本当に思わずカカシさんに抱きついてしまった。
理由は簡単、怖かったから。
情けないけど。



まあ、でもさあ。
成人過ぎた同性に抱きつかれたら気持ち悪いよな、普通。
可愛らしい女の子だったら、ともかくカカシさんに抱きついたのは成人をとっくに過ぎた俺だ。
抱きついた時点で突き飛ばされても文句は言えない。
カカシさんが、どうしてなんでここにいるのかは兎も角として。
でもカカシさんは俺を気持ち悪がらず、突き飛ばしもせずに俺が抱きついても嫌がらなかった。
むしろ、よしよしと慰めてくれた。
その瞬間、現金だが俺のカカシさんへの評価は変わった。
はたけ上忍からカカシさんに変わった瞬間でもある。
カカシさんて、なんて良い人優しい人と感動した。
感動のあまりカカシさんがここにいる理由を尋ね忘れてしまった。
今、思えばちゃーんと訊いておけばよかったのだが・・・。
とにかく、俺の中で良い人認定されたカカシさんは、それから姿を見ても別に何とも思わなくなった。
それどころかカカシさんを見ると安心してしまったりしていたので始末に終えない。
カカシさんは、いつも俺を見て、にこにこしていて、なんかこう、あれだ。
あれってあれ。
見ていると胸がきゅ・・・じゃなくて、どきっとするような気がした。
これって何だろう?
それとカカシさんが俺を見る目が異様に優しい。
どういう訳だ。
混乱しながら件の同僚に訊いてみたら、同僚はあっさり答えてくれた。
「恋してるんじゃねーの?イルカに」
いとも、あっさりと。



カカシさんが俺に恋?
天変地異というか晴天の霹靂というか、全く考えてみたこともない点を突かれて俺は焦った。
まさか!
いや、でも、ほんとに?
そう思って見るとカカシさんの行動には、それに符号するのがものすごく多いんだ。
同性が同性に恋?
そういうことがあってもおかしくないのは知ってはいたが、自分の身に起こるとなると俄かには信じられなかった。
だって、俺、どっからどう見ても男だし。
柔らかくないし、たおやかじゃないし、小さくもない。
なのに何故!
理解不能だと、その時は思った。
それで、もやもやとした気持ちを抱えたまま悶々と日々を過ごしていたが限界が来た。
こんな気持ちを持て余すのは嫌だ、当たって砕けろって思って。
間違いなら間違いでいい、もし間違いじゃなかったらという怖い予想は一先ず忘れて知らないふりをして。
カカシさんに、びしっと言ってみた。
人差し指を突きつけて。
どっちかっていうと挑戦みたいな雰囲気で。
「いっぺん、お付き合いしてみますか?」
カカシさんを睨んで、来るなら来い!って気持ちだったんだけど。
意外なことにカカシさんは俺の申し出を受けた。
つまり了承した。
ええええ、なんで?
カカシさんを見ると明らかに喜んでいる。
俺、何か間違えたか・・・。
とっても嫌な予感がしたが後には退けない。
苦し紛れの予防線は張った。
「お付き合いっていっても、お付き合いするかどうかを決めるお付き合いですよ?」って。



それからカカシさんは律儀に約束を守って節度あるお付き合いをしてくれた。
最初の握手以来、手を握ってもこないし、ましてやキス・・・なんてこともしない。
俺と一緒にいられるだけで嬉しいみたいな感じで。
やっぱり、すごく良い人だった。
それに優しくて気遣ってくれて、一緒にいると気が休まったりして。
知らず知らずにうちに俺がカカシさんに惹かれていた。
気がつけば好きになっていた。
といっても俺たちのお付き合いは、お付き合いを決めるお付き合い。
ややこしい。
先ずはこの、ややこい関係を脱しないと。
幸いにも、もうすぐカカシさんの誕生日だ。
俺は考えに考えた。
ごく自然にさり気なくお付き合いをする方法。
それはプレゼントという名目で何とかする、という適当、かつ一見無謀ともいえる作戦だった。



俺はカカシさんに言った。
「プレゼントは選択制で三つあります」
一つ、二つ、とプレゼントを言っていく。
別に全部、プレゼントしても全く構わないんだけど如何せん、そこは恥かしくて照れくさい。
こんな俺でも恥かしかったのだ。
好きな人が目の前にいて自分を見ていると思うと、思春期でもないの甘酸っぱいような気持ちになる。
三つ目のプレゼントを言う時、どきどきしすぎてカカシさんの顔が見れなかった。
顔が勝手に熱くなる。
あー、緊張する・・・。
なんとか言い終えたものの、俺のプレゼントの内容を聞いたカカシさんが、どんな顔をしているのか見るのが恐ろしい。
俺は、くるりと身を翻して全速力で逃げた。
逃げる際に「誕生日当日までに考えておいてください!」と言うのを忘れなかったのは自分でも偉いと思う。
もうすぐ、カカシさんの誕生日。
カカシさんはプレゼントに何を選ぶのだろう。
早く誕生日になってほしいような、ほしくないような。
結果が解るのが怖いような気がする。
カカシさんの誕生日は俺にとって悩ましい誕生日になりそうであった。




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