メモリアル
ある秋晴れの日。
休みが重なったカカシとイルカは買い物に出かけた。
買い物といっても足りなくなった日用品、食料品などだ。
ついでに外でご飯でも食べようかという話になった。
二人は付き合って三年になる。
いわゆる恋仲というやつで仲睦まじいこと、この上ない。
今日にしても名目は買い物であったが実質上はデートであった。
「あ」
買い物をしていたイルカが足を止めた。
「早いなあ」
店頭にあったカレンダーを手に取る。
「もう来年のカレンダーが出てますよ」
色とりどり、形様々なカレンダーが並んでいた。
「色々ありますねえ」
イルカは物珍しげにカレンダーを見ている。
「ほんと、たくさんありますねえ」
横にいるカカシもカレンダーの一つを手に取って、ぱらぱらと捲っていた。
「あ、犬のカレンダーがありますよ!可愛いですね、カカシさん、どうですか?」
犬好きなカカシにイルカが犬のカレンダーを勧めてきた。
「うーん、犬は好きですけど」
それよりカカシは別のカレンダーが気になるらしい。
予定が書けるように空白があるカレンダーを見ていた。
「これ、いいなあ」
シンプルなカレンダーだ。
予定だけがきっちり書き込めるようになっている。
「ね、イルカ先生」
カカシがイルカに、にこ、と笑いかけた。
「来年はおんなじカレンダー使いませんか?」
これ、とカカシは手に持っていたカレンダーをイルカに示した。
カカシの気に入ったカレンダーを購入し、ご飯を食べて必要な買い物をして帰ってきた。
帰ってきてからカカシは、いつもに益して機嫌がいい。
イルカが、ちょっとお茶でもと台所へ立った間に買ってきたカレンダーを二つ、テーブルの上に出していた。
何も予定が書かれていないカレンダーを見ながらカカシが腕を組んで、ふっふっふっと笑っている。
何が、そんなに楽しいのか。
「カカシさん、何かあったんですか?」
不思議に思ったイルカがカカシに訊く。
「あ、どうも」
お茶を受け取りながらカカシは笑みを絶やさない。
「あったっていうかね、これからあるっていうか」
「はあ」
「イルカ先生」
きらっと輝く目でカカシがイルカを見つめる。
「このカレンダーに二人の予定とか、俺が書き込んでいいですか」
熱心に言ってきた。
「二人の予定って?」
「お互いの誕生日とか色々、諸々です」
クリスマスや正月などのイベントの日には赤丸で印をつけます、と子供のように嬉しそうにする。
その様子に見て断り切れなかったイルカは苦笑しながら「いいですよ」と頷いてしまった。
お茶を飲み、イルカは用事を思い出しカカシを残して別の部屋に行った。
カカシはカレンダーに何かを一生懸命に書き込んでいたので邪魔をしないようにと声を掛けたりしなかった。
調べものをしていたイルカは、ふと顔を上げた。
時間がだいぶ過ぎている。
カカシさんは何をしているのだろうか?
まだカレンダーに書き込みでもしているのか。
それとも、いつもの本を読んでいるのか。
気になったイルカはカカシの元へ戻ると・・・。
カカシは嬉々としてカレンダーに未だ何かを書き込んでいる。
後ろから覗いて見ると、そこには。
「わーっ、こ、これは何ですか!」
イルカがカカシの書き込みを見て悲鳴を上げた。
「な、なに、これ・・・」
絶句している。
「えー、何って言われてもー」
カカシは、とぼける。
「予定ですよ、よ、て、い」
可愛く首を傾げたりしていた。
「そんなことでは誤魔化されませんよ、俺は」
イルカは、わざと恐い顔をする。
「だいたい、この記念日とかメモリアルとか二人の愛のなんとかって」
「えー、それはですねー」
邪気のない笑みをカカシは浮かべた。
手には分厚い手帳がある。
「俺とイルカ先生が付き合って三年間にあった記念になる出来事を総て書き溜めてみたんですよー」と言われた。
「三年間・・・」
複雑な表情なイルカ。
「三年間も、こつこつと、そんなこと書いていたんですか」
「そんなことって俺には大事なことですよ」
イルカを隣に座らせたカカシはイルカを、ぎゅっと抱きしめた。
「イルカ先生を思い出すといつだって強くなれますから」
「カカシさん」
そんな言葉にイルカの胸は詰まる。
「イルカ先生との思い出は全部俺の宝です」
だから忘れないように手帳に書き留めていました、とカカシは囁いて。
それから二人はキスをした。
もちろん、その後。
カカシは手帳の今日のことを書き留めて。
二人の愛の記念日。
メモリアルとしたのだった。
text top
top