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いつも



イルカ先生は、いつも親切で優しい。
報告書を出しに行くと、いつも笑顔だ。
丁寧に報告書をチェックして誤字脱字があると、それを相手の負担にならないようにさり気なく指摘してくる。
ここら辺はアカデミーの教師をやってるだけあって秀逸だ。
間違いを伝える相手に適切に指導。
尊敬してしまう。
他にもイルカ先生は色々と尊敬できる。
なんか、こう色んなことを知っているんだよなあ。
生きていく上で必要な術を。



イルカ先生の家にお邪魔したときのことだった。
茶たくに座った時に座布団を勧められた。
ちなみに俺んちには座布団はない。
お茶を淹れてくれる時に湯飲みを先に温めてからお茶を淹れてくれた。
俺は適当、飲み物はなんでもいい。
お茶請けもあった。
常備しているなんて、すごい。
俺の家には皆無だ。
・・・まあ、俺は任務で家にいない時間が多いから家のことに気を遣ってないのが一目瞭然なんだけど。
多分、イルカ先生がやっていることはごく普通のことなんだよなあ。
でも、と俺は思った。
イルカ先生の傍は、とても居心地が良かった。
心が休まるというか落ち着くというか癒されるというか。
話していて楽しくて、話してなくても気まずくならない。
イルカ先生を見ているだけで幸せだ。
これは、すごいことだ。
気がつけば俺は、いつもイルカ先生と一緒にいた。



「ただいま〜」
任務から戻った俺が帰ったところはイルカ先生の家だった。
「あ、お帰りなさい」
家にいたイルカ先生が玄関に顔を出す。
「お疲れさまでした」と笑顔つきで俺を労わってくれる。
いいなあ、こういうの。
癒しだよね、和みだよね。
俺たち家族みたい。
・・・・・・そういや、家族みたいで思い出したけど。
俺はイルカ先生の家に住まわせてもらって何ヶ月かになる。
自分の家には滅多に帰らなくなった。
理由は簡単、イルカ先生がいないから。
誰もいない寂しい家に帰るのは嫌だ。
いつもイルカ先生の傍にいたい。
それだけだった。



イルカ先生の家に住まわせてもらってるけど俺だって何もしていない訳じゃない。
言い訳みたいになるが念のため。
家の中のことは結構している、イルカ先生に教えてもらっていることが多々あるけどね。
食事を作ったり後片付けしたり洗濯も掃除もする。
買い物もイルカ先生と一緒に行ったりしてイルカ先生とすごく仲がいい。
・・・と思う。
思うってのは俺の勝手な憶測。
イルカ先生は俺が傍にいてもイルカ先生の家に帰ってきても一度も断られたことないし迷惑な顔をされたこともない。
はっきり拒否されたことがない。
本当は嫌なのかもしれなくて、それが言えないのかもしれなくて。
もしかして俺が知らないだけかもしれない。



ある日のことだった。
家の外でイルカ先生を見かけた。
家の外ってことは仕事中ってわけで、見かけたってことはイルカ先生は他の誰かといたってことだ。
その時、俺は同じ上忍仲間のアスマと紅といたんだけど。
他の誰かと話すイルカ先生と見て腹の底から強烈に何かが涌き上がってきた。
涌き上がってきた何かの正体は皆目不明だけど、面白くないと思ったのは確かだ。
イルカ先生は誰かと仕事の話なのか真面目な顔で話していた。
「ああ、分かった。それなら俺がやっておくよ」
「いつも悪いな、イルカ」
・・・・・・いつも!
「お詫びに今度、飲むの奢るからさ」
「いいよ、そんなの」
・・・・・・奢る!
「なんなら今日にでも、どうだ?」
「気にするなって」
・・・・・・今日!
「最近、飲んでないだろ。いいじゃないか」
「あー、うーん。そうだなあ」
イルカ先生は悩んでいるようだった。
飲みに行くなら今、話している誰かと行くのだろうか?
二人きりで!
俺じゃない誰かと・・・。
イルカ先生は首を横に振った。
「今日は止めとくよ、早く帰らなきゃならないし。誘ってくれてありがとな」
そのイルカ先生の言葉を聞いて俺は、ほーっと大きく息を吐き出した。
「よかった〜」
口から出ていた。
そんな俺を見ていた紅が言った。
「イルカ先生のこと好きなの?」



「は?好き?」
好きってなんだ、好きって。
「イルカ先生のことは普通に好きだ〜よ」
俺が言うと紅は首を振った。
「そういう好きじゃなくて、恋してる、惚れているって方の好きよ」
恋してる・・・。
惚れている・・・。
予想外のことを言われて固まる俺。
そんなこと思ってもみなかった。
「だって俺とイルカ先生、男同士だよ」
一般的な意見を言ってみる。
紅は一蹴。
「同性同士の恋愛だってあるでしょ」
「まあ、あるにはあるけどさー」
「さっき、イルカ先生を見ていたカカシの顔ったらなかったわよ。青くなったり赤くなったり、殺気も半端なかったし」
嫉妬駄々漏れよ、と。
「嫉妬!」
・・・ってなんだっけ?
「紅の気のせいじゃないの」
一応の反論を試みたが紅は美しい顔に意地悪そうな笑みを浮かべた。
「だったらイルカ先生が他の誰かと食事や飲みに行ってもいいのね?」
「それはだめ!」
間髪いれずに言うとアスマと紅は肩を竦めた。
「ほーらね、嫉妬よ、それは」
「嫉妬だな、それは」
口々に言われた。
そんでもって紅が、びしっと俺に人差し指を突きつけてきた。
「だいたいね、もう一緒に住んでいるじゃない。帰りも都合がつけば二人で帰っているし、出勤も一緒だし。好きじゃなかったらなんなのよ!」
それは正論だった。
俺はイルカ先生が好き、なんだよなあ。
前に家族みたいだと思ったけど恋人の方が断然いい。
それから俺は血の気が引いた。
「イルカ先生に好きって言ってない!」
アスマと紅は哀れむように俺を見て深い溜め息を吐いていた。



好きもなにも俺は自分の気持ちに気づかなくてイルカ先生に何も伝えていない。
なのに、なんでイルカ先生は俺が自分の家に住むのを許してくれているんだろう?
その日は任務を超特急で終わらせて急いで家に帰った、イルカ先生の家に。
いつもは一緒に帰るけど今日はイルカ先生の仕事が早く終わるって聞いていたから先に家に帰っているはずだ。
「ただいま!」
ばん、と大きな音を立てて玄関の扉を開けると驚いた顔のイルカ先生が顔を出してきた。
「お帰りなさい。・・・どうかしましたか?」
俺が大きな音を立てたのを不審に思ったらしい。
「あ、いや、これは、その。ちょっと慌てていたので」
「何を慌てているんですか」
「ええと、あの」
なんと言っていいのやら。
いきなり「実は好きだったんです」って言っていいのか。
いや「イルカ先生のことが好きだってことに気がつけなくて」とか?
気が利いた台詞が浮かばない。
・・・どうしたらいい?



玄関で突っ立ている俺にイルカ先生は近づいてきた。
「カカシさん?具合でも悪いんですか?」
顔を覗き込んでくる。
「お腹減っていませんか、ご飯は出来ていますよ」
優しい言葉を言ってくれた。
なんでもない優しい言葉だ、相手を気遣う。
なんていうか、こういう些細なことが重なってイルカ先生を好きになっていったんだな、俺。
「カカシさん」
名を呼ばれて反射的に俺はイルカ先生の腕を掴んで抱き寄せていた。
イルカ先生を抱きしめるのは初めてだった。
今までこんなことしたことはなかったけれど好きな相手を抱きしめるという行為は、なんて好いものなんだろう。
満たされる。
「あ、あのっ」
戸惑うイルカ先生を離さずに俺は自分の気持ちを告げた。
「好きです」
「え」
「俺、イルカ先生が好きなんです」
ぐっと抱きしめる腕に力を入れる。
「気がつくのが遅かったけどイルカ先生が好きで堪らないんです」
いったん、好きと言ってしまうと次から次へと言葉が溢れてきた。
「イルカ先生が好きだから一緒にいたいし傍にいたい。好きです、いつも俺だけ見ていてほしい」
腕の中で強張っていたイルカ先生の体が、ふっと緩むのを感じた。
体の緊張は解けたみたいだけど抱きしめているのでイルカ先生の心臓の鼓動が直に伝わってきて。
どきどきしているのが分かった。
そういう俺の心臓もどきどきしているけど。
「あ、あの、俺も・・・」
イルカ先生の小さな声、好きですっていう小さな声がした。
「俺もカカシさんのことが好きで、だから・・・」
なし崩し的に一緒に住むようになっても抵抗はなかったと言うイルカ先生。
そっか・・・。
そっか、そっか。



にこりと笑って俺はイルカ先生の顔を見た。
笑みは知らずに浮かんできて尽きることはない。
にこにこにこにこしている。
イルカ先生も笑みを浮かべているけど、ぎこちない。
照れているのかな〜。
可愛い、と思うと同時に俺はイルカ先生にキスをしていた。
好きだという思いを全面に出して。
思いの有りっ丈を注ぎ込んで。
キスが終わったときにイルカ先生は嫌がってはいなかったが真っ赤になっていた。
そんな顔を見ていると、もっとキスをしたくなる。
いつもいつもキスしていたくなるなあ。
後から分かったことだけど恋愛ごとに関しては俺に一日の長があるみたい。
イルカ先生には色々教えられたけど、今度は俺が教える番かな〜と一人、にやついたりしている俺だった。





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