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ただいま、おかえりなさい



カカシが火影勅命の単独任務の報告を終え退室しようとしたとき、入れ違いにイルカが入ってきた。
「失礼致します」
丁寧な言葉と共に一礼をして入ってきたイルカはカカシと見とめると微笑んだ。
カカシも微笑み返す。
「ああ、イルカ来たか」
どうやらイルカは火影に呼ばれていたらしい。
「先日の申し出の件だがな」
「はい」
「本当にあれでいいのか」
「はい、構いません」
「そうか」
傍らの書類を取った火影は綴ってある書類をペラペラと捲って内容を確認するとイルカの前に差し出した。
「読んでからサインしてくれれば速やかに手続きしよう」
「はい」
火影から渡された書類をイルカは熱心に読み始める。
カカシは退室するタイミングを失って何となく、その場に残ってしまった。
「カカシ、どうした?」
そんなカカシを訝しげに思ったのか、火影は声を掛けてくる。
「え?あ、いや、その・・・」
「もう行っていいぞ」
「あー、はい」
では、と退室しようとするとイルカが書類を読み終わったのか、サラサラと指定された場所にサインをした。
「では火影さま。よろしくお願い致します」
「うむ」
了解したと言った火影は書類を受け取り結局、カカシは用事の終わったイルカと部屋を辞した。



廊下に出てからイルカは改めてカカシに微笑みかけた、会えて嬉しいと。
「任務からお帰りだったんですね、カカシさん」
「ええ、ついさっき」
「お怪我は?」
「ないですよ」
すると今度は、ほっとしたような笑みに変化する。
「よかった」
カカシが任務に出ているときイルカはカカシのことを心配している。
誰よりも。
いつも。
何よりも。
無事に里に帰ってきてカカシの顔を見るとイルカは心底安心する。
何故ならカカシとイルカはそれなりに大人のお付き合いをしているから。
皆に内緒にはしているけれども。
廊下に誰もいないのを確認してからカカシはイルカの手を、そっと握る。
久しぶりに恋人に触れる。
イルカの熱を感じながら、そうっと大事に包み込むように握った手の力は徐々に強まっていく。
「心配かけてごめんね」
「いいえ」
ふるふるとイルカは首を振る。
イルカに心配を掛けることは心苦しくもあるのだが、だが逆の気持ちもカカシにはある。
心配してもらうことが嬉しかったりもするのだ。
たくさん心配してもらうほどイルカが自分に対して、どれだけ深い愛情を注いでくれているのか実感する。
───独占欲が強いっていうか悪趣味だな、俺も。
心の中でカカシは苦笑した。



「ところで」
カカシは気になってしまったことをイルカに訊いた。
先程の火影とイルカの遣り取りだ。
カカシがいても構わなかったところから重要な機密なのではなかったようで。
「ああ、あれですか」
イルカは顔の横一線を走る傷に障った。
イルカの照れたときの癖だ。
「別に大したこともないんですけどね」
照れながらイルカは話してくれた。
「実は半年ほど前に里中で財布を拾いまして」
拾得物として届けたんですよね。
「へえ」
「そしたら半年間、財布の持ち主が名乗り出なくて。その場合は自動的に拾った人のものになるんですよね」
つまり財布の中味はイルカのものになったということだ。
「いくら入っていたんですか?」
その財布に。
下世話な質問ではあったが、ついカカシは訊いてしまった。
「金額ですか」
少し声を潜めてイルカは答えた。
「十一万両です」
結構な金額であった。
「十一万両・・・」
そんな大金をイルカはどうしたのだろう。
火影は手続きするとか言っていた。
「結構な額ですね」
「ですよねー」
カカシとイルカは手を繋ぎなら廊下をゆっくりと歩く。
「でもまあ拾ったもので、元々俺のものではないですから」
イルカの顔は穏やかだった。
「里のために使ってくださいと火影さまにお願いしてきたんです」
そういうところはイルカは潔い。
「始めからなかったも同然のお金だったんですから」
出来たら里の子供のために使ってほしいと火影さまにはお伝えしました。
「そうですか」
「はい」
イルカは晴れやかに笑いカカシは握っていたイルカの手に一瞬、力を込めた。



少し歩くと廊下の曲がり角に突き当たった。
「あ・・・。じゃあ、この辺で。俺はアカデミーに戻ります」
カカシさんは?
「あー、俺は」
がしがしとカカシは頭を掻いた。
実を言うとこのまま家に帰って寝ようと思っていた。
だけど。
「控え室でイルカ先生の仕事が終わるのを待っていますから」
一緒に帰りましょう?
そんな気分だった。
「分かりました」
頷いたイルカは、するっとカカシの手から自分の手を引き抜いた。
「仕事が終わったらお迎えに伺いますね」
「待っています」
今度はカカシが待つ番だ。
だがそこには心配するようなことは何もない。
それでは、とカカシに会釈してイルカはアカデミーに通じる廊下の角を曲がろうとした、そのとき。
カカシが呼び止めた。
「イルカ先生!」
イルカが足を止めて振り返る。
「大好きです!」
少し声が大きかったから、もしかして誰かに聞こえたかもしれない。
それでもよかった。
「大好きですから!」
もう一回言うとイルカは傍から見ても判るほど顔を真っ赤にして足早に行ってしまった。
「行っちゃった、イルカ先生」
少しだけ寂しい。
すぐに会えるのは解っていても
。 上忍の控え室に向かいながらカカシは考えた。
自分は戦うことで里を護っている、イルカは戦うことしないけれども里を護っている。
どちらも里を思う気持ちは同じだ。
「何だかさ」
頭の後ろで両手を組んだカカシは呟いた。
「惚れ直しちゃうよねえ」
イルカ先生。
愛しい恋人の名はいつでもカカシに力をくれる。
どんなときにも。





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