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好きな人と幸せになれる百の方法



イルカ先生が休憩時間に本を読んでいた。
アカデミーの校庭の隅の落ち葉が舞い散る木の下で。
まあ、読書の秋だしなあ。
俺は微笑ましく思って読書しているイルカ先生を見つめた。
遠くから。
本を読むイルカ先生の顔は真剣で素敵だ。
どんな本を読んでいるのだろう。
興味が出た俺は、そっとイルカ先生に近寄った。
イルカ先生が読んでいたのは今、流行りの何とかをする百の方法とかいう本だった。
何とかっていうのは、色々種類があって俺も読んでいたりする。
ちなみに俺の読んでいるのは『好きな人に告白して恋人になる百の方法』って本。
サクラも同じ本を読んでいた。



イルカ先生は何の方法の本を読んでいるのかな。
わくわくしながらイルカ先生に近寄るとイルカ先生が読んでいたのは・・・。
『好きな人に上手にふられる百の方法』という本であった。
・・・上手にふられる?
そんな本も出ていたのか〜、じゃなくて。
なんでイルカ先生が、そんな本を?
誰かにふられる予定でもあるのか。
なんかモヤモヤしてしまう。
何故なら、それは。
俺がイルカ先生のことを好きで好きで、好きで。
告白しようと思っているからだ。
そうして告白して恋人になれるようにと願いながら、気休めかに本なんて読んだりしている。
イルカ先生は、どういうつもりで、あんな本を読んでいたのろうか。
謎だ。


次の日、イルカ先生を見かけると、また本を読んでいた。
今度は『自分をふった相手が幸せになる百の方法』って本。 ・・・イルカ先生は自分をふった相手に幸せになってほしい、のか?
ふった相手なのに。
自分をふった相手が他の人と付き合ってもいいってこと?
俺なら絶対に嫌だ。
好きな人が他の誰かと付き合うなんて。
そんなの邪魔してやる、と思ってしまうんだけど。
イルカ先生は違うんだなあ。
寛大な心を持っている、と思う。
好きな人が他の誰かを好きになるのを許せるなんて。



そして俺は、またまたイルカ先生が本を読んでいる場面に出くわした。
いつもながら真剣だ。
今度は、どんな本を読んでいるのかな。
『失恋しても明るい気持ちになれる百の方法』って本だった・・・。
なんていうか、イルカ先生って。
もしかして、ふられること前提で好きな人がいる、のかな。
それは誰だろう。
非常に気にかかる。
イルカ先生の好きな人。
俺の好きな人の好きな人ってことだ。



イルカ先生は好きな人がいて、その人に告白してふられるつもりで。
でも、ふられても、好きな人に幸せになってほしくて。
そして告白してふられても、相手を恨まず、明るい気持ちで前向きに生きていこうということなのだろう。
なんて、いじらしい。
イルカ先生らしいよ。
自分より相手の気持ちのことを考えているなんて。
いじらしいけど、考えると切ないものがある。
俺は、そんなイルカ先生が好きで、そして幸せになってほしい、と思ってしまった。
もちろん、俺と。
そんで俺は考えた。
どうやったら、イルカ先生と幸せに慣れるかって。



明くる日。
俺は本を読んでいるイルカ先生に近づいてた。
イルカ先生は今日も本を読んでいる。
今日の本は『好きな人を死ぬまで好きでいる百の方法』って。
イルカ先生はどうやら、ふられても一人の人を、ずっと好きでいようとしているみたい。
一途だ。
そして可愛い。
そんなイルカ先生に俺は声をかける。
「イルカ先生。」
「わっ!」
背後から静かに声をかけたのがいけなかったのか、イルカ先生は飛び上がるほど驚いていた。
驚いて手にしていた本を落としていた。



「カ、カシ先生。」
ドキドキしているのか、胸を押さえるイルカ先生。
「どうして、ここに?」
「ええ、まあ。ちょっとした通りすがりです。」
イルカ先生が落とした本を拾って俺は、さりげなくイルカ先生の横に腰を下ろす。
並んで座るのっていいなあ。
はい、とイルカ先生に本を差し出すと何故か頬を、ほんのりと頬を染めて受け取った。
「・・・すみません。」
「いえいえ。」
しーんとしてしまった。
会話が続かない。
イルカ先生は俺の登場で一気に緊張してしまったようで、本を胸に抱えて何も喋らない。
うーん、これは俺から話すしかない、な・・・。



「イルカ先生。」
名を呼ぶとイルカ先生の肩が、びくっと動いた。
「な、んでしょう。」
明らかに動揺している。
「えっとですね。」
「は、はい。」
俺は出来るだけ穏やかな声を出した。
場の雰囲気が和やかになるように。
ついでに笑みも絶やさずに。
「これ、よかったら。」
読んでください、とある本をイルカ先生の目の前に差し出した。



「え、これって。」
目を瞬かせてから俺を見る。
それから本のタイトルを読み上げた。
「『好きな人と幸せになれる百の方法』」
読んでから首を傾げている。
「あと、これもです。」
俺は続けて本をイルカ先生の目の前に出す。
「『好きな人に告白して恋人になる百の方法』」
これは先日、読んでいた本だ。
「それからこれです。」
次の本を出すとき俺は、かなり緊張していた。
イルカ先生が本のタイトルを声に出して読む。



「ええと『好きな人が隣にいても緊張しないで話せる百の方法』」
今、まさに、その状況だ。
イルカ先生が隣にいる、つまり好きな人が隣にいるということだ。
俺は、はああ〜と深呼吸して気持ちを落ち着けようとした。
イルカ先生が隣にいるとドキドキしっぱなしだ、いつもは沈着冷静な俺なのに。
一挙一動、一投足が気になってしまう。
気になってイルカ先生が一分間に何回、呼吸するのか、呼吸の回数まで数えてしまいそうだった。
瞬きの回数とかも数えてしまいたい。
「あの、カカシ先生。これって・・・。」
どういうことなのだ、とイルカ先生の瞳が問いかけてくる。
ここが正念場だ。



俺は気を落ち着けて焦らずに、ゆっくりと言った。
「あのですね。」
「はい。」
イルカ先生の真摯な目が俺を見つめる。
「これが俺の気持ちです、イルカ先生への。」
本に頼って告白するのは、いささか情けなかったがそんなことも言っていられない。
だってイルカ先生が誰かに告白して失恋するなんて嫌だった。
失恋するくらいだったら、俺を選んでほしい。
俺は一気に喋った。
イルカ先生の顔を見て。



「今、好きな人が隣にいて緊張しています、その好きな人に俺は愛を告げてそれからそれから。」
ああ、人生で一番、緊張しているよ、俺。
「それから好きな人と、好きな人と・・・。」
ごくり、と唾を飲み込む。
喉が乾いてきて上手く声が出ない。
「好きな人と恋人同士になって、あんなことしたりこんなことしたりして、二人っきりでイチャイチャベタベタしたりして永遠の愛を誓い合って末永く一緒にいたいと思っていて。」
そうして。
「幸せになって、幸せな生涯を過ごせたらって。」
やっと言えた!
ぜいぜい、はあはあと、これを言うだけで息切れしている俺は年かもしれない・・・。



俺の一世一代の告白は終わった。
そして、とっても気になる返事。
イルカ先生は俺のことを、じっと見つめていた。
黒い瞳の中に俺が映っている。
何を考えているのか・・・。
俺が差し出した本のタイトルを見て、もう一度、俺を見た。
そして笑った。
ふわり、と。
嬉しそうに。
俺の胸に明るい希望の光が射し込んだ。
もしかして、これは!



「これって。」
イルカ先生が照れているのか、見ていた俺の顔から視線を逸らす。
「つまり。」
顔が、ほんのりではなく、はっきりと赤くなっていた。
「俺のことが好き、ってこと、なんでしょうか?」
小さい声が頼りなく聞こえる。
「あ、そう!そうです!」
肝心なこと言うのを忘れていた。
「俺、イルカ先生のことが好きなんです!」
「俺も」とイルカ先生の口から、するりと言葉が滑り出た。
「俺もカカシ先生のことが。」
好きなんです、と聞こえた。
好きなんです・・・。
誰が誰を?
イルカ先生が俺を?
好きだって!



「カカシ先生と初めてお会いした時からカカシ先生のことが気になって、いつの間にか好きになっていたんですけど。」
イルカ先生が俯く。
「なにぶん、男同士だし結ばれることはないと思って。でも自分を諦めさせるにはカカシ先生に告白してふってもらわないと、と考えて。」
なるほど、だから、あんな本を読んでいたのか。
ふられるとか失恋とか。
でも『自分をふった相手が幸せになる百の方法』とか読んでいたよね、『好きな人を死ぬまで好きでいる百の方法』とかも。
イルカ先生は例え、ふられても俺のことを好きでいてくれて、そして幸せになってほしいと思っていてくれていたのか。
俺だったらイルカ先生に幸せになってほしいと思っても、ふられたら何回も諦めずにアタックするだろうなあ。
これだけは解る、自分のことなので。
まあ、それも、だったらの話で。



俺の目の前にはイルカ先生がいて。
俺のことが好きで。
俺もイルカ先生が好きで。
相思相愛、念願叶って晴れて恋人同士になれたから。
隣りに座るイルカ先生の手を、きゅっと握ると恥ずかしそうにしながらも握り返してくれた。
ああ、幸せだ〜。
きっと、これからもっと幸せになる。
あんなことやこんなことをするのは、まだ先かもしれないが、そんなに遠い未来でもないと思う。
俺は隣にいるイルカ先生との幸せな未来を、うっとりと想像したのだった。






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